ハイスピードかつ合理的に移ろいゆく現代社会の中、マーケティング業界において無視することのできない概念があります。
皆さん「リキッド消費」という言葉を聞いたことがありますでしょうか?
この「リキッド消費」は現代マーケティング界隈において超重要キーワードであり、もはや必修事項です。
この記事では「リキッド消費」とは何たるものなのか、そしてその特徴や要因、最終的にはリキッド社会下における具体的なマーケティング戦略まで簡単に解説致します。
この記事を読んで頂ければ
「リキッド消費」について深く理解することができ、今後の消費社会において強い存在感を示せるようなマーケテイングを行うことができるでしょう。
では早速参りましょう!
「リキッド消費」とは?
リキッド消費とは
「所有を前提とせずに一時的、短期的な使用権のみで物資が少ない新しい消費スタイル」です。
ITの発達によって、グローバル化が進み、あらゆる価値観や境界線が曖昧かつ流動的になりました。
そういった社会の流動化に伴って、消費生活も変化し、モノを所有しない新しい消費スタイルが確立され始めています。
これまでの「ソリッド消費」=物質主義、物量重視、の考え方から、
即時的、瞬間的に楽しみ物質に依拠しない消費=「リキッド消費」
がトレンドになっているのです。
リキッド消費の具体的な例
ここではリキッド消費の具体的な例をあげてみます。
カーシェア
所有するのがどこか人生的にも前提であった車。
今ではカーシェアサービスの登場によって「車持つより、カーシェアの方がコスパ良くない?」という声も聞こえるほどに。
シェアオフィス
企業は大きくてかっこいいオフィスを構えることもどこかステータスだったはず。
今ではリモートワーク中心のため機能的な最低限のオフィスで、さらには他社と交流ができる場所になりました。
動画サブスクリプション
映画やアニメはレンタルビデオショップで借りて鑑賞する、見終わったたら返却ポストへ返す。
そんな時代でしたが、今ではNetflix, Amazon Prime, Hulu, U-NEXTなど大手配信サービスがひしめく状況になっています。
音楽配信サービス
音楽は最新CDをいち早く購入してMDに録音してウォークマンで聴くという時代でした。
今では、iTunes, AWA, LINE Music, Youtube Musicなど音楽も動画のサブスクリプションサービスと同じように配信サービスがひしめく状況になっています。
今ではCDを買わなくなった時代とまで言われるようになりました。
体験型サービス
既存ビジネスの代替が起こっただけでなく、旅行などでは体験型レジャーやSNS映えを目的とされた場所や商品が数多く見られるようになり、これらの仕掛けなしではPRもなかなか難しい状況となっています。
香川県の父母ヶ浜や高屋神社~天空の鳥居~はインスタグラム映えする場所としてかなり有名になりましたね。
リキッド消費という概念は、ポーランドの社会学者ジグムント・バウマンが提示した「リキッド・モダニティ」という考え方に依拠しています。
「リキッド・モダニティ」=液状化する社会、の特徴は変化と不安定性であり、それらの要因の1つとしてデジタル化の進行が挙げられています。
液状化する社会の液状化した消費形態が「リキッド消費」なのです。
「リキッド消費」の特徴
さてそんなリキッド消費ですが、その特徴を捉えておくことで今後の情勢やトレンドが理解でき、将来的なマーケティング戦略の一助になります。
しっかりと理解しておきましょう。
リキッド消費の特徴は大きく分けて3つ
1. 脱物質
2. 短命性
3. アクセスベース型の消費
1つずつ解説していきます。
脱物質
リキッド消費は物質的な消費から解放された消費とも言えるでしょう。
物質を自ら所有するのではなく、レンタルやシェア、サブスクリプションなどで欲求を満たします。
手元に自分の欲しいモノがある、という価値観が昔ほど重視されなくなってきました。
かつては「モノを所有すること」が豊かさの象徴となっていましたが、
リキッド消費社会においては「質の高いサービスを利用すること」が豊かさの象徴となりつつあります。
また、そういった意識の変化から、物質ではなく「経験」に重きを置くようになっているのもリキッド消費の特徴です。
同じ体験を経験した人同士がシェアすることによってコミュニケーションが生まれ、またそこに新たな消費が発生します。
さらに、IT化が進み、メタバースやNFTが主流になると、より脱物質化が進むことが予想されます。
短命性
消費される対象の短命性もリキッド消費の特徴の一つと言えます。
ひと昔前のように、高額のモノを長期間所有して利用する消費スタイルではなく、瞬間瞬間で欲しいものや利用したいものを消費する傾向が強くなりました。
要因として、購買までのハードルが低くなったことが挙げられるでしょう。
現代社会ではスマホやパソコンを使って指先1つで買い物ができ、購入するサービスも物質的ではないものが多いです。
欲求が起きた時に瞬間的に購買でき、すぐに楽しむことができる。
そういった傾向が強まり、商品の短命性がより進行していると考えられます。
消費のサイクルが早いので、
シンプルかつリーズナブルなものが求められやすくなっていることにも注意が必要でしょう。
アクセス・ベース型の消費
アクセス・ベースとは「所有権が移らない取引による消費」のことで、ホテルの宿泊やDVD・CDのレンタルなどがそれに当たります。
このアクセス・ベース型の消費が昔よりも注目を集めるようになってきています。
所有権を買うのではなく、使用権を買うと言い換えることもできます。
リキッド消費社会において特に勢いのあるアクセス・ベース型のサービスは車や自転車、空間などのシェアリングやリース、映画や音楽や服などのサブスクリプションサービスなどが挙げられます。
アクセス・ベース型の消費をすることで、物質的な束縛から解放されて、変化に富んだ自由なライフスタイルを送ることができます。
その風潮が現代の若者を中心に流行していると言えるでしょう。
「リキッド消費」が広がっている要因とは?
リキッド消費とは何なのか、そしてその特徴とは何なのかが理解できたかと思います。
それではリキッド消費が広がっている要因とは何なのでしょうか。
その源泉を掴むことで、マーケティングやブランディングの参考になるかと思います。
要因①:デジタルの普及
上記のリキッド・モダニティ論でも説明しましたが、リキッド消費を広める大きな要因の1つがこちらでしょう。
消費者側にとっても、サービスの提供側にとってもデジタルの普及は市場に大きな変化をもたらしました。
消費者側にとっては、商品の購入やレンタルが指先1つで行えるようになり、消費へのハードルが下がったこと、
提供側にとっては、供給にかかるコストが大幅に下がり、速度も飛躍的に速くなったことが挙げられます。
また、商品自体もデジタル化されているものが多くなり、わざわざ所有をする必要がなくなったのもリキッド消費に拍車をかけています。
②体験重視の傾向
こちらも特徴の中で解説致しましたが、現代社会においてはモノ消費ではなくコト消費、物質ではなく体験を重視する傾向が見られます。
コミュニケーション技術の発達や価値観の多様性から、共有することや分かち合うことに消費の注目が向かっています。
そこにおいて、友人や恋人、家族などと同様の体験をすること、または自分のした体験をシェアすることがトレンドとなっており、物質的ではないリキッド消費を進行させています。
③環境問題への意識
近年若者の間で環境問題への課題意識が芽生えています。
SDGsなどが声高に叫ばれる昨今、自然と環境問題に配慮をした行動をとる傾向になっているようです。
昭和は「量」が重視され、平成は「質」が重視され、令和には「最適」が重視される、という言葉があります。
大量消費、大量廃棄の時代は終わり、
ゴミを出さないクリーンでシンプルな消費生活に変化していると言えるでしょう。
環境問題への取り組みに対して好感を抱くのは、商品自体に対してももちろんですが、
会社全体の取り組みにも注目しているようです。
今後の社会を生き抜く会社にするには環境問題は避けては通れないでしょう。
「リキッド消費」に合うサービスとは?
さて、そこにおいてこの「リキッド消費社会」を生き抜いていくために、
どのようなサービスを展開していけばいいのかを最後に解説致しましょう。
こちらを読んで、自社のマーケティングや商品開発の参考にして頂ければと思います。
主なターゲットは?
リキッド消費を支える主な客層は「Z世代」と呼ばれる人達です。
「Z世代」とは1990年台中盤から2010年台序盤までに生まれた世代で、
生まれた時からデジタル化された社会が存在し、スマホも普及しているのでスマホネイティブ、SNSネイティブとも言われています。
Z世代は社会全体の変化を敏感に感じて、多様性を好み、日常生活において合理化された様式を好む傾向があります。
そういった傾向から、消費生活においても
「役に立つ」「コストパフォーマンスが高い」ということが重視され、またサービスの多様性、アップデートを好みます。
こういったZ世代の特徴を掴んだマーケティングが重要となってくるでしょう。
どういったサービスが良いのか?
さてそこでどういったサービスがリキッド消費社会で受け入れられやすいのかを考えてみましょう。
以下のサービスがリキッド消費社会において台頭してくるかと思います。
- 手軽で買いやすいサービス
- 多様性を楽しめるサービス
- シェアリングサービス
- 環境に配慮したサービス
- シェアしたくなる物珍しいサービス
具体例とともに掘り下げていきましょう。
手軽で買いやすいサービス
リキッド消費社会においては消費のスピードや流行の変化の速さに乗り遅れると途端に注目されなくなってしまうので、手軽で買いやすくしておくことは大切です。
消費者の欲求の発生から商品購入までのハードルをなるべく省くことがとても重要です。
具体例
・自社サイト、ECサイトの購入手続きの簡略化、サイトの直感性の強化
・店頭販売の場合は商品の魅力がすぐに分かるような案内を出す
・最大限コストを抑えて、安価で買いやすいものを作る
・有名人やインフルエンサーのお墨付き、ランキングなどを積極的に開示する
多様性を楽しめるサービス
個々人の価値観を認め合う社会性の発達に伴い、多様性に富んだサービスを好む傾向が見られます。
オンリーワンの目玉商品のみで勝負するより、消費者側に選択権があるような商品展開が必要です。
具体例
・頻繁に新商品の拡充、マイナーチェンジを行う
・デジタルサービスにおいては、アップデートを定期的に行う
・味、色、匂いなど五感を刺激する要素に変化を加えたラインナップを取り揃える
シェアリングサービス
こちらはリキッド消費の象徴とも言えるサービスです。
Z世代は自ら所有をしなくても必要な時に使えれば良いと判断し、レンタルやシェアで十分だと考えます。
シェアやレンタルの勢いは今後も留まることはないでしょう。
[具体例]
・サブスクリプションサービス、シェアリングサービスへの参入
・シェアオフィスやシェアカーなどに付随するサービスへの拡充(ネット環境整備や備品の拡充、清掃業など)
・SNSとの連動キャンペーンを打ち、消費者側にシェアを促す
環境に配慮したサービス
若い世代を中心に環境問題に敏感になっていることは前述した通りです。
物質から離れて環境破壊を促進しないようにしたり、環境に配慮された商品を好んだり、また、企業のイメージや取り組みにも注目が集まっています。
消費のトレンドとしての側面もありますが、環境問題は社会全体で考えていくべきことなので積極的に取り組んでいきましょう。
[具体例]
・パッケージやラベルなどを工夫してプラスチック、ビニールを減らす
・会社としての環境に対する取り組みをSNSで発信する
・環境問題解決を促進するような商品を開発する(ソーラーパネル、電気カーなど)
・店舗、社屋をクリーンな状態に保ち、イメージを維持する
シェアしたくなる物珍しいサービス
リキッド消費はシェアの消費。
こちらはシェアリングサービスという意味ではなく、いわゆる「ばえる」商品です。
流行の移り変わりが早い反面、瞬間的にバズり(人気になり)いっときのムーブメントを作ることができます。
ただし、そういった商品開発ばかりをしたり、そこのみに注目したマーケティングをしているとすぐに衰退しかねません。
あくまで流行の一端として考えて戦略的にサービス提供を考えましょう。
具体例
・各種SNSに投稿しやすいような商品を開発する
・インフルエンサーとコラボした商品、マーケティング
・自社内でも商品の使用感等をSNS投稿する
リキッド消費におけるサービスは紹介したような観点で的を絞ることも可能なのですが、変化に富み捉え難いことも事実です。
今紹介したものがいつの間にか時代遅れになっている可能性もあります。
サービス提供側も常に市場を観察し、流行に乗り遅れないようにすることが肝要です。
まとめ
以上が「リキッド消費」に関する基礎知識と適用すべきサービスの紹介でした。
いかがでしたでしょうか?
リキッド消費に関する知識を押さえた上で社会を見ると、
それだけで視野が広がり、俯瞰的な目線であらゆる物事を捉えられるかと思います。
主流になりつつあるリキッド消費ですが、
従来型のソリッド消費が無くなるわけではない、ということも念頭に置いておくべきでしょう。
時代の潮流を掴みながらも、物質的にもデジタル面でもあらゆる側面で柔軟に対応できるような準備をしておきましょう。
それではまた。