マーケティングの手法は多数ありますが、現代社会において再注目されている手法があります。
それが「コーズマーケティング」です。
この記事では「コーズマーケティング」とは何であるのかを深掘りし、コーズマーケティングを成功させる秘訣やメリット・デメリットなどを紹介します。
この記事を読むことによって「コーズマーケティング」について深く理解でき、サービスの拡大に貢献できると思います。
では早速参りましょう!
「コーズマーケティング」とは?
コーズマーケティング(別名コーズ・リレーティッド・マーケティングCRM[Cause-Related-Marketing])とは
「自社の商品の購入によって出た売上の一部が、寄付などを通して環境保護や社会貢献活動などに結びつくことを消費者に訴求することで、商品の購入を促すマーケティング手法」
です。
分かりやすい例として、
「この商品の売上の10%はNPO法人に寄付されます」
「この商品の売上の一部は、発展途上国の子どもたちのための学校設立に寄付されます」
「この水を買うと、世界の遠い所の水不足の国に水が送られます」
など。
こういったメッセージを商品のパッケージや広告で見たことがある方は多いのではないかと思います。
「コーズマーケティング」はアメリカの経営学者フィリップ・コトラーが提唱した概念で、
企業による社会貢献をマーケティングに応用することを指し、社会貢献をしながらも販売促進をし企業のブランドイメージアップに繋げるという考え方です。
上手く使いこなすことができれば、
消費者もその商品を購入することで社会貢献をしたという気持ちを抱きやすく、寄付先も資源や資金を得ることができ、企業側も売上増加やイメージアップにつながるという「三方良し」の状況がつくれます。
しかし、場合によっては「利益目的・イメージ戦略の為だけの見せかけの活動」と取られる場合もあるので、しっかりとした目的意識と実際の行動が大切になってきます。
「コーズマーケティング」の歴史
「コーズマーケティング」が歴史上最初に行われたのは、1976年アメリカのホテル大手であるMarriott Corporationと早産や死産などあらゆる母子の健康改善を目指す慈善団体March of Dimesが協賛で実施したキャンペーンだと言われています。
また、世界的に「コーズマーケティング」の概念が広がったのは、1983年のAmericanExpressによる「自由の女神修復プロジェクト」でしょう。
カード発行1枚、利用1回毎に自由の女神の修復基金にAmericanExpressから1セント寄付する、というプロジェクトです。
このプロジェクトは大きく成功し、最終的に170万ドルもの寄付金が集まりました。
それと同時にAmerican Expressのカード利用者は30%以上増加したと言われています。
社会に貢献しながらも企業の利益も向上させる「コーズマーケティング」の素晴らしい成功例ですね。
「コーズマーケティング」の目的・効果
American Expressのように「コーズマーケティング」を使って成功するパターンもありますが、目的やその方向性が不明確だと、消費者の信用を失いかねません。
「コーズマーケティング」の目的を再確認して、適切な施策を講じましょう。
①社会貢献・環境保全
コーズマーケティングはポーズや見せかけではなく、実際に社会貢献に役立ち、環境保全に影響を与えるような施策でなければ意味がありません。
大切なのは、企業や商品と関連性のある寄付先を選ぶこと。
かつ、社会の課題として、重要度や緊急性が高いものであることです。
環境に配慮していると見せかけて実情はそうではない商品やサービスを提供することを「グリーンウォッシュ」と言いますが、そうなってしまうと会社の大幅なイメージ低下につながりかねません。
あくまで利益優先ではなく、社会貢献するという強い意識のもと「コーズマーケティング」を行うのが大切です。
②企業のイメージアップ
現代社会において社会に貢献している、環境に配慮している企業はイメージが良いです。
SDGsという言葉が叫ばれる昨今、環境保護の意識や社会課題を解決しようとする意識が法人のみならず個人にも芽生えております。
消費活動も自然と社会貢献意識の高い企業や商品を選ぶように変化しています。
社会貢献をしたい個人の欲求を満たしながらも、企業のイメージアップにも繋げられる。
「コーズマーケティング」にはそのような目的・効果があります。
③商品の購買意欲を向上させる
②で御説明した通り、今現在多くの消費者が社会貢献に対する前向きな意識を持っています。
そこで「コーズマーケティング」によって社会的なメッセージや社会問題に取り組む姿勢を見せることで、競合他社・商品との差別化ができ、購入を促せます。
実際「社会や環境に対してポジティブな影響を与える企業のサービスに対しては通常より多い金額を払っても良い」と考える人は、
世界各国で人口の過半数以上を超えている、というデータもあります。
社会貢献と消費活動との繋がりはとても強いことが伺えます。
④インナーブランデイング
インナーブランディングとは「企業が自社の社員に対して、企業理念やブランド価値などを伝え、意識の向上を図ること」です。
コーズマーケテイングとインナーブランディングの相性はとても良いです。
自分の働いている会社が社会貢献意識が強く、自分の働きが社会の課題解決に繋がっていると考えるとモチベーションが刺激されるかと思います。
自分の仕事、自分の会社に誇りを持てる社員を育てるのもコーズマーケティングの目的・効果と言えるでしょう。
⑤非営利団体・寄付先の認知向上
現在数多くの非営利団体が社会貢献、問題解決の為に積極的に活動しています。
その活動はどれも素晴らしいものですが、悲しいかな一般の方々まで認知が届いていないというのが問題です。
そこでコーズマーケティングを図っている企業と非営利団体が繋がることによって、消費者に団体の取り組みや課題意識を周知させることができます。
それにより活動資金も多く得ることができ、社会貢献に多く役立てることができるでしょう。
「コーズマーケティング」を成功させるには
「コーズマーケティング」とは何なのか、そして、どういった目的や効果があるのかは理解できたかと思います。
今後取り組んでいきたい、取り組んでいるけれどもいまいち結果が出ない。
そうお考えの方もいらっしゃるかと思います。
そこで次は「コーズマーケティング」を成功させるためのヒントをお伝えします。
実はありがたいことに、アメリカの大手広告代理店であるCone Communicationsが「コーズマーケティングを成功させる為の10のヒント」を公式に発表しております。
多くの企業がこのヒントを指針にしておりますので、そちらを紹介していきましょう。
1. 自社の目標や目指すべき所を鑑み、それらに沿ったテーマにする
2. 自社の意思やリソースを精査し、投資したい対象に投資する
3. 競合他社がどんなコーズマーケティングをしているか分析する
4. NPOや寄付先はパートナーである。慎重に選定する
5. キャンペーン名を重要視する
6. コーズマーケティング専門のチームを社内で構成する
7. ボランティアやキャッシュ、店舗など自社とパートナーの資産をフル活用する
8. 可能な限りあらゆるチャネル・ツールを活用して全方位的にコミュニケーションを図る
9. 地域に根ざした行動で市民やボランティアなどと繋がる
10. 常に新しい価値観を更新し、プロジェクトを進化させる
⑴~⑶は準備段階、⑷~⑹はプロジェクトの企画段階、⑺~⑽は実行段階で重要となります。
全て成功に欠かせない要素ですので一つ一つのプロセスを慎重に進めていくことが大切です。
これらを総合すると「コーズマーケティング」を成功させるためには、
企業がターゲットとする顧客に響くコーズは何なのかを適切に選定し、企業の理念や事業に沿い、かつ事業上の価値を生み出すことができるのか、などを総合的に勘案したうえでマーケティングプランを練り上げていくことが重要なのです。
「コーズマーケティング」のデメリット
「コーズマーケティング」に関して理解が深まり、実践する方法も理解できたかと思います。
ここでコーズマーケティングのデメリットも押さえておいて、失敗を避けられるようにしましょう。
デメリット①:費用対効果が低い
コーズマーケティングは他のマーケティング手法に比べて、費用対効果が低いとされています。
品質を上げたり、パッケージを変更したり、他のプロモーションに資金を投入したりする方が、結果的に低コストで高い売上にすることができる場合もあります。
マーケティング戦略として、他の手法と比べて有効であるのか、最も良い戦略なのかどうかは慎重に判断しなければならないでしょう。
デメリット②:「グリーンウォッシュ」と捉えられてイメージを損なう可能性がある
先述した「グリーンウォッシュ」ですが、たとえ自社がグリーンウォッシュをしている意識は無くても消費者からそう捉えられてしまう可能性があります。
成功のためのヒントでもお伝えした通り、自社の理念や事業戦略と合致したコーズマーケティングが大切です。
流行に流されて消費者が食いつくからという単純な理由で手をつけるものではありません。
確固たる信念と純粋な心でもってコーズマーケティングに取り組みましょう。
デメリット③:機能するのは購買時点に限られる
コーズマーケティングは消費者がその施策を知覚した時点からその効果の持続時間が短いと言われています。
POP(Point of Purchase)=購買時点、に限られるマーケティング戦略であり、長期的な企業の成長を見た場合には効果が薄いという声もあります。
コーズマーケティングを進めていこうとする企業は、こういった長期的な目線も含めて戦略を練らないといけません。
目先の利益にとらわれて本質を見失わないようにしましょう。
「コーズマーケティング」の成功事例
最後にこれまで行われたコーズマーケティングの成功事例をお伝えしましょう。
他社の成功したコーズマーケティングを参考にして、効果的なプロジェクトを考えましょう。
1L for 10L(ワンリッターフォーテンリッター)キャンペーン
こちらは日本にコーズマーケティングを広めたプロジェクトの代表例とされています。
飲料メーカー大手のキリンが委託販売していたフランスのミネラルウォーター「ヴォルビック」を1L分購入すると、アフリカのマリ共和国に10Lの水が寄付されるプロジェクトです。
ユニセフとの共同プロジェクトであり、累計で477万L以上の水が寄付され、277機以上の井戸が作られました。
プロジェクトが開始された初年度は売り上げが倍以上になるという大きな成功を収めております。
単に寄付をするだけでなく、その過程や結果を逐一報告して消費者にも知ってもらったことが信頼獲得にも繋がり、成功の大きな要因となりました。
ベルマーク運動
皆さんも親しみのある「ベルマーク」
これもコーズマーケティングの1つだとされています。
ベルマーク運動の流れは、
学校で集めたベルマークをベルマーク財団に送る
↓
点数に応じた金額が所定のPTAに送られる
↓
PTAが学校教育に必要な商品を購入する
↓
料金の一部が支援の必要な人たちや教育機関に寄付される
という仕組みです。
ベルマークがついている商品は文房具やお菓子など子どもに親しみがあるものが多いので、販売を促進しながらもチャリティー活動にも当てられる、コーズマーケティングの好例と言えるでしょう。
バターサブレ北ふく郎
パンやお菓子の製造、販売をしている『morimoto』の商品「バターサブレ北ふく郎」は、北海道に生息するシマフクロウの形をしたサブレです。
そこで施策したコーズマーケティングは、売り上げの一部をシマフクロウの保護のために寄付する、ということでした。
morimotoは北海道に本社があり、地域の環境保全を考えた上でお土産や名産品として商品を展開していくという会社の理念とコーズの目的が合致した素晴らしいコーズマーケティングの1つです。
まとめ
以上が「コーズマーケティング」の概要や成功するためのヒントでした。
いかがでしたでしょうか?
あらゆる環境問題、社会問題が表沙汰になりかつ深刻化している現代社会において、日常的な消費行動と関わりの深いコーズマーケティングは大きな効果を発揮することでしょう。
また、企業だけでなく、個人のレベルからも社会課題に対して向き合うことが大切です。
こちらの記事を読んで頂いた皆さんの行動が今この瞬間から少しでも変わり、より良い未来をみんなで作れるように祈ります。
ではまたお会いしましょう!!